NFTの売買や譲渡ではどのような税制度が適用される?

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泉絢也教授
取材にご協力頂いた方

千葉商科大学/商経学部
泉絢也准教授
略歴
2001年早稲田大学政治経済学部卒業後、国士舘大学大学院/法学研究科/法学専攻博士課程単位取得退学・中央大学大学院・商学研究科・商学専攻博士課程後期博士課程修了。
現在は、千葉商科大学商経学部を担当している。
クリプト系の税金を得意とする税法研究者でもあり、
著書
「事例でわかる!NFT・暗号資産の税務」「キャッチアップ仮想通貨の最新税務」
Youtube「【生放送】NFTと税務、どう税金計算すれば良いか?」
泉絢也准教授Twitter

なぜ誰でも閲覧できるNFTに価値がつくのか?

「泉絢也教授による解説」

NFTの価値については色々議論があります。例えば、デジタルアートやイラストと結び付いているNFTの場合には、
①値上がりを期待、②製作したクリエイターやプロジェクトを応援、③NFTの保有者だけに与えられる特典・資格を利用、④著作物を合法的に利用など、
様々な観点から値段(価値)が付いていくのだと思います。

NFTに価値が付く理由

NFTに価値が付く理由については、様々な議論があるが一般的には「値上がりの期待・製作者やプロジェクトを応援したい・NFT保有者への特典目的・著作物を利用したい」といった理由が代表的に挙げられる。

NFTの売買に適用される現行の税制度とは?

「泉絢也教授による解説」

例えば、個人のクリエイターの方がデジタルアートをNFT化して、販売し、代金(暗号資産等)を受領すれば、所得税が発生します。
コレクターの方が譲渡しても同様です。

ただし、ケースによって譲渡所得又は雑所得など所得区分が変わったりします。
また、法人の場合は法人税が発生します。個人又は法人が事業として行っていれば、消費税が発生する可能性もあります。

NFTの購入者は、ケースによっては購入代金支払時に源泉所得税を徴収する必要があります。

NFTの売買に適用される税制度
  • 所得税・法人税:NFTの売買時に発生する
  • 譲渡所得:デジタルアートに紐づけたNFTの転売をした場合に発生
  • 雑所得:営利目的で継続的にNFTの売買をしている場合に発生
  • 源泉所得税:NFTの購入時に発生するケースがある
  • 消費税:NFTの売買を事業として行う場合に発生する

NFTの譲渡においては、譲渡所得が適用される?

「泉絢也教授による解説」

色々ありますが、大まかにいえば、譲渡した場合にNFTは譲渡所得になりうる(二次流通の場合で、かつ、営利を目的とした継続的な譲渡に該当しない場合)が、暗号資産は雑所得になると国税庁は考えています。
この場合の原価計算について、NFTは個別に取得価額を計算しますが、暗号資産は取得金額の平均値で取得価額を計算します。

個人がNFTを他の個人に贈与しても贈与者に所得税はかかりませんが、暗号資産を贈与すると所得税がかかります。
消費税について、NFTの譲渡にはかかりますが、暗号資産の譲渡にはかかりません。

NFTと暗号資産の税制度の違い
NFT 暗号資産
譲渡時 譲渡所得
(二次流通で一定の要件を満たす場合)
雑所得
原価計算 個別に取得価額を計算 取得金額の平均値で計算
贈与時 贈与者に所得税なし 贈与者に所得税あり
消費税 譲渡時あり 譲渡時なし

NFTやDAOなどのWeb3が抱えている課税の課題は?

「泉絢也教授による解説」

課税関係が明確ではありません。国税庁、実務家、研究者のいずれもが十分に新しいものの課税関係について検討しきれていませんので、
課税リスクがあります。

また、匿名でグローバル取引を行っているので、国税庁が取引情報を把握することが難しく、納税者も、取引の相手方が日本の居住者であるかなどの
情報を把握できず、特に源泉所得税や消費税の計算・納税等を正しく行うことが難しくなります。

中央にプラットフォームのような仲介者がいない場合には情報の把握が一層難しくなります。
法令・通達等の改正、国際的協調体制の強化、新技術の導入等によってこれらの課題に挑むことになるでしょう。