ADHDのある人が退職したくなる悩み事は?グレーゾーンの特徴もまとめて解説

ADHD退職

ADHDの特性は、仕事をするうえでマイナスになる面も少なくありません。また職場での理解を得られずに、苦しい思いをしている人も多いことでしょう。

ADHDのある人が退職したくなる悩み事はどのようなものがあるのでしょうか?
悩み事や対処法、グレーゾーンの特徴までまとめて解説していきます。

目次

大前提!ADHDで退職することは問題ありません

大前提!ADHDで退職することは問題ありません

大前提として知っておいていただきたいのは「ADHDが理由で退職することは全く問題ない!」ということです。

世間ではいまだに自分がツライからといって退職するのは「甘え」「逃げ」というネガティブな印象を持っている人も少なくありません。

その一方で退職している人も多く、なかには「ちょっと違う仕事をしてみたい」といった感覚で転職していく人もいいます。つまり退職して転職することはそれほど気軽になっており、珍しくなくなってきているのです。

また退職は法律で「労働者の自由」として認められているので、我慢する必要もなければ会社の都合で制限されていいものでもありません。

「どんな理由であっても、退職できないほうがおかしい」ということを理解しておきましょう。

ADHDを理由として退職することはまったく問題ではありません。とはいえ、生きていくためには働いてお金を稼ぐ必要があります。そのためには、自分に合った職業選びが非常に重要になります。自分の特性をしっかりと理解して、自分に向いていると感じる職業を探してみましょう。

そもそもADHD(注意欠如・多動性障害)とはどんな障害?

ADHDは、医学的に注意欠如・多動性障害と呼ばれる発達障害の一種です。注意力が散漫になったり、落ち着きがないなどの症状が見られるケースが多く、それが原因で職場や生活でミスやトラブルを起こしてしまうこともあります。

現在のところADHDになる原因などは明確になっておらず、根本的な治療方法が見つかっていない状況です。そのため、ADHDと上手に付き合いながら、自分にあった職業や生活を見つけることが重要となります。

退職の要因になりうるADHDのある人の8つの悩みごと

退職の要因になりうるADHDのある人の8つの悩みごと

ADHDの特性は仕事をするうえで妨げになってしまうことも多く、ADHDのある人を悩ませています。

退職の要因になりうるADHDのある人の悩みごと
  • 整理整頓がうまくできない
  • 記入漏れなどのミスや忘れ物が多い
  • スケジュールの先延ばしや遅刻をしやすい
  • タスク管理がうまくいかない
  • 気が散りやすくて集中できない
  • 興味のあることしかする気になれない
  • 職場に障がいを隠すことがツライ

悩みごと①整理整頓がうまくできない

ADHDのある人は作業中に他のことに気を取られてしまい、書類や道具を無意識にいろんなところに置きっぱなしにする傾向があります。そのため気づけば大事な資料が書類の山に埋もれていたり、道具がどこにいったかわからなくなったりすることがよくあります。

整理整頓は仕事の効率に大きく関わってきます。また大事な書類の紛失は信用問題に発展しかねません。整理整頓が苦手なことはADHDのある人をとても悩ませています。

悩みごと②記入漏れなどのミスや忘れ物が多い

ADHDの特性にはケアレスミスが非常に多いです。書類をよく読まないで承認したり、よく確認しないで作業をして後からミスが発覚したりということが起こります。

また目先のことに気を取られてしまい、忘れ物をするということもあるようです。

ケアレスミスや忘れ物は業務を中断することになるだけでなく、わざわざチェックするために他の人の時間を取ることにもなります。

悩みごと③スケジュールの先延ばしや遅刻をしやすい

ADHDのある人は自分でスケジュールを立てたり、調整したりが苦手な場合も多くあります。

ADHDの特性である衝動性が強い人は自分の感覚で動いてしまい、物事の効率のいい進め方ができません。そのせいで遅刻をしたり優先すべき内容を先延ばしにしたりしてしまいます。

また衝動性が強くなくても不注意でスケジュールを見落としたり、時間の見積もりがうまくできず準備が間に合わなかったりということもあるようです。

スケジュール管理は社内だけでなく取引先や顧客に迷惑をかける可能性も大きく、ADHDのある人を悩ませています。

悩みごと④タスク管理がうまくいかない

スケジュール管理と似ていますが、ADHDのある人はタスク管理も苦手といわれています。

ADHDのある人は物だけでなく、以下のような考えの整理整頓が困難です。

  • 業務を遂行するための必要な作業を考える
  • 作業の優先順位をつけて計画を立てる
  • 作業の進捗を追う
  • 作業の状態によって計画を修正する

順を追って考えの組み立てができないため業務を最後まで遂行できなかったり、業務が溜まってくると遂行そのものを放棄してしまったりします。また新しい業務がくるとそちらに気を取られ、進行中の業務を忘れてしまうこともあります。

悩みごと⑤気が散りやすくて集中できない

仕事は納期が近いときや繁忙期など、集中して取り組まなければならないこともあります。

しかしADHDのある人は他の人に話しかけられたり、違う業務の話しをされたりするとそちらが気になって仕事に集中できなくなることも少なくありません。

悩みごと⑥興味のあることしかする気になれない

「興味のあることしかやる気になれない」ということもADHDの特性です。ADHDある人は興味のないことは手につかないかわりに、興味心のあることに対しては異常な執着や集中力を発揮します。

当然ですが会社に属している限り、自分の好き嫌いで業務を選ぶことはできません。ADHDのある人に限ったことではありませんが、やりたくない仕事を嫌々するのは苦痛です。また興味のないことを先延ばしにしてしまって怒られるということも悩みの種のようです。

悩みごと⑦職場に障がいを隠すことがツライ

障がいがあることを隠して一般採用されている人は、障がいを隠して仕事しなくてはならずツライ思いをしているようです。

障がい者雇用枠での採用ならば、職場が障がいのことを理解してくれているので働きやすい環境が整っています。しかし一般採用だと障がいのことをオープンにできないので、障がいのある人にとって厳しい環境で働くことになります。たとえ周囲に「仕事ができない人」「だらしない人」と思われても、受け入れるしかありません。

さらに後から障がいがあるということがわかると、上司や同僚との信頼関係が崩れてしまう可能性もあります。障がいがバレることの不安感とも戦わなくてはいけません。

悩みごと⑧うつ病など精神疾患になってしまった(二次障害)

ADHDのある人は業務内容が合わない、職場でのコミュニケーションがうまくいかないなど悩みごとが多いことから、うつ病などの精神疾患になることもあります。

このように業務上のストレスや周囲との不適応によって精神疾患になってしまう状況を「二次障害」といいます。

ADHDなど発達障がいのある人がその特性だけでなく、うつ病などの精神疾患の問題まで抱えることになると非常に苦しいです。

退職したいのは仕事内容が原因かも?ADHDの人に向いていない仕事

ADHDを持つ人はさまざまな特性を抱えています。仕事によってはその特性がデメリットになってしまうこともあります。もしかしたら、今の職業を退職したいと考える原因は、自分の特性と仕事がマッチしていないからかもしれません。

接客業や窓口受付などマルチタスクが求められる仕事

複数の業務を少しずつ片づけていくようなマルチタスクは、ADHDを持つ人にとっては難しいと感じることがあるのではないでしょうか。ADHDを持つ人の特性として、自分の好きなことに熱中することが挙げられます。

マルチタスクは、複数の仕事をバランス良くこなしていくことが求められるため、自分が好きな業務だけに集中することはできません。また、優先順位を決めてタスクに取り組むことも求められるため、整理整頓が苦手という人にも向かないことがあります。

医師や秘書などミスが許されない職種

ケアレスミスや注意力が低下する特性を持っている場合は、ミスが許されないような職業には不向きといえます。これはADHDかどうかに関わらずですが、ついうっかりが許されない職業はたくさんあります。

人の命に関わる医師の仕事や、会社の利益に関わる社長のスケジュール管理をする秘書などは、常に細心の注意を払う必要があります。場合によっては過失責任を問われてしまうこともあるため、多少のミスであればある程度カバーできる職業を選ぶことも選択肢のひとつです。

工場での検品・仕分けなどの単純作業

集中力が続かないという特性を持っている場合や、別のことに気が向いてしまいがちな人は、工場で製品の検品や仕分けなどの単純作業には不向きです。ADHDの特性のひとつに、物事を長時間集中して取り組んでしまい、疲れがドッと出てしまうことがあります。

また、単純作業を繰り返すことが辛くなり、注意力が散漫になるケースも見受けられます。しかし、ひとつの物事に極度に集中できる特性を持っている場合は、単純作業において十分に力を発揮できることもあるため、自分の特性を見極めることが重要です。

活躍の場は多い!ADHDの人の長所

ADHDを持つことはデメリットととらえる人が多いようですが、決してそんなことはありません。ADHDの特性を長所にすることでより活躍できるケースもあります。もし、ADHDを持つことで不利だと感じている人は、考え方を変えて自分の長所を探してみることをおすすめします。

感受性が豊かでアイデア出しが得意

ADHDを持つ人は感受性が豊かで、アイデア出しが得意な人が多い傾向にあります。さまざまな要因が考えられますが、とくにADHDの多動性の影響が考えられます。アイデアを生み出すときはひとつの考えに凝り固まらず、自由にさまざまな側面から物事を考えることが必要です。

そこで、いろいろなものに興味がいってしまうという特性を上手く利用できれば、簡単には思いつかない独創的なアイデアが生み出せるかもしれません。

考えたことをすぐに行動に移せる

フットワークが軽いことはビジネスにおいても素晴らしい長所になります。もちろん、じっくりと検討してから動くことも重要ですが、状況によっては思いついたことにすぐに取り組める行動力が求められる局面もあります。

ADHDを抱える人の悩みでもある衝動性を、行動力に変えることができるかもしれません。じつは成功している人の多くは、思いついたことをすぐに行動に移せる人が多く、その行動力が成功の秘訣になっています。スピード感を持って取り組む必要がある業務などでは長所として活かせる可能性があります。

自分の探究心を追い求められる

ひとつのことに異常に集中してしまうことは、ほかの物事に気が回らなくなるため注意力が不足していると思われがちです。しかし、なにかひとつのことに集中して取り組むことは、誰にでもできることではありません。とくに研究分野やクリエイティブな場面では、妥協せずにとことん物事を追求する姿勢が求められることがあります。

ADHDを持つ人にとっては興味のない分野に集中しなければならない環境は苦痛になりますが、自分が好きなことや興味のある分野においては、存分に力を発揮できるでしょう。

 

発達障がいのグレーゾーンが疑われる特徴3選

発達障がいのグレーゾーンが疑われる特徴3選
発達障がいのグレーゾーンは医療機関などで使われる正式な診断名ではありません。

グレーゾーンとは「発達障がいと疑われる症状があるものの、白黒はっきりと判断がつかない状況」をいいます。

特徴①確定診断を下されていない状態

発達障がいは心療内科などで「発達障がいである」と診断される必要があります。しかしグレーゾーンは「発達障がいの傾向がある状態」なので、診断名がつきません。

発達障がいには「発達障がいがある」と、はっきりとした確定診断をするためにいくつかの診断基準があります。

例えば、厚生労働省ではADHDの診断基準を下記のように示しており「全ての条件を満たした場合にADHDと診断する」としています。

【ADHDの診断基準】

1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること
3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと
引用https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html

つまり診断基準のどれか一つでも欠けていたら「ADHDではない」ということになります。しかし確定診断がされないからといって、症状が軽いというわけではありません。

特徴②必要な支援を受けられない

発達障がいと診断されないからといって職場や日常生活において支障がないわけではありません。グレーゾーンであっても就職サポートなど支援が必要な場合もあります。

このような支援を受ける場合、たいていは「診断書」や「障害書手帳」が必要です。しかしグレーゾーンは「発達障がい」の確定診断が出ていないので、どちらも入手は困難でしょう。

グレーゾーンだと発達障がいの特性があっても、必要な支援を受けることができません。

特徴③二次障害を引き起こす可能性がある

グレーゾーンはたとえ症状があって苦しくても「発達障がい」とみなされていません。そのため「ちゃんとできないのは単なる甘え」「怠けているだけだろう」など、周囲からの理解を得にくい状態にあります。

もちろん障がいに対する配慮はしてもらえませんし、結果が出なければ本人の能力不足と判断されてしまいます。

このようなストレスが重なるとうつ病などの精神疾患になる可能性があります。

グレーゾーンが抱えやすい仕事上の問題点6つ

グレーゾーンが抱えやすい仕事上の問題点6つ

グレーゾーンは「発達障がい」と認められませんが、症状が軽いというわけではありません。そのため仕事のうえでも様々な問題が発生します。

グレーゾーンが抱えやすい仕事上の問題点
  • 仕事の全体的なイメージが掴めない
  • あいまいな指示では混乱してしまう
  • 好きな作業だけに没頭してしまう
  • 空気の読めない言動をしてしまう
  • 口頭だけでの説明では理解できない
  • 障がい者雇用枠で働くことができない

具体的に説明していきます。

問題点①仕事の全体的なイメージが掴めない

グレーゾーンには、仕事の全体的なイメージが掴みにくいという問題があります。

自分の好きなことや興味のあることへのこだわりが強くそちらに意識がいきがちなため、仕事の全体像を見るのが困難です。全体が見えないと「この仕事を完成させるためにはどうしたらいいか」という段取りも取れません。

問題点②あいまいな指示では混乱してしまう

曖昧な指示をされても理解できず、混乱してしまうことがあります。

発達障がいのある人は言葉を額面通りに受け取ってしまうので「適当に」「いい感じに」などといったあいまいな表現や言葉の行間を読むことが苦手です。

明確な度合いを示してもらえないと混乱してしまい、どうしようもないほど雑に終わらせてしまうことがあります。

問題点③好きな作業だけに没頭してしまう

好きな作業にとにかく集中します。好きなことや興味のあることに関してはどこまでも追求する反面、興味のないことは何度やっても知識も技術も身につけるのが困難です。

問題点④空気の読めない言動をしてしまう

空気の読めない言動をしてしまうという問題もあります。相手がどう思っているかという想像力が欠如しており、「暗黙の了解」や「世間の常識」という配慮ができないです。

そのため取引先や顧客に対してなんでも「自分が正しい」と思ったことを率直に言い過ぎてしまい、不快な気分にさせたりトラブルになったりします。

問題点⑤口頭だけでの説明では理解できない

口頭の指示の理解力が低い傾向があり、高騰の説明では理解できない場合があります。

資料やメールなど視覚から入る情報のほうが理解できますが、会社では口頭指示をされる場面も多く、間違った行動をしたり指示が抜け落ちたりしてしまうことがあります。

問題点⑥障がい者雇用枠で働くことができない

発達障がいのある人は採用前に会社に障がいを伝えることで理解と配慮を得られたり、「障がい者雇用枠」で就職したりすることができます。

しかしグレーゾーンは「発達障がい」ではないので、症状に対して配慮を受けることができません。配慮を受けられないなかで働かなければならないので、どうしても仕事の評価は低くなりがちです。

ADHDで退職したくなった際にやってほしい対処法

発達障がいのある人が退職したくなったときにやってほしい対処法

発達障がいのある人が退職したくなったときにやってほしい対処法があります。

退職したくなったときにやってほしい対処法
  • かかりつけの医療機関に相談する
  • 家族に相談する
  • 産業医面談を受ける
  • 支援機関に協力を求める
  • 職場に業務の補助ツールを導入してみる
  • 異動願いを提出する
  • 休職してみる
  • 貯蓄など現在の経済面を確認しておく

退職したくなったときは悩みを1人で抱え込まないことが大切です。周囲の協力を得ながら対処していきましょう。

かかりつけの医療機関に相談する

かかりつけの医療機関があるときは一番に相談しましょう。

医師は症状を最も理解してくれていますし、専門知識も豊富です。仕事での状況を説明すれば、これからどうすべきか的確なアドバイスを得ることができます。

家族に相談する

家族に相談することも重要です。

「心配させてしまう」と思うかもしれませんが、退職してから伝えるほうが家族に余計な心配をかけてしまいます。また退職してから家族や配偶者に報告することで、関係を悪化させることもあります。

家族に相談すると退職以外の選択肢を提案してくれたり、自分では思いつかないような転職先をアドバイスしてくれたりすることもあるでしょう。退職したくなったら家族にも相談し、どのようにしていくのがいいか話し合うようにしてください。

産業医面談を受ける

会社の規模にもよりますが、産業医の面談も効果的な対処法です。産業医への相談は個人情報なので、上司に報告されることは一切ありません。

また産業医はかかりつけ医と違い、本人の了解を得て職場改善のために会社に働きかけてくれることもあります。職場が改善されれば退職したいという原因がなくなるかもしれません。

支援機関に協力を求める

例えば発達障がいのある人を支援する機関は、以下のようなものがあります。

  • 発達障害情報・支援センター…発達障害のある人が自信や誇りを持って生活できるように様々な間接支援を行っています。
  • 障害者就業・生活支援センター…障害がある人の就業面と生活面のサポートを行っています。

お住まいに最寄りの窓口で相談を受け付けています。基本的に無料ですのでぜひ利用してみてください。

職場に業務の補助ツールを導入してみる

「仕事ができない」ことを悩んでいるのであれば、補助できるツールを使うと解決できるかもしれません。

例えばADHDのある人には、以下のようなツールが有効です。

  • タイムツリー…スケジュール管理・共有アプリ。周囲の人たちからリマインドしてほしい人は活用できる
  • Google ToDo リスト…Google社が提供するタスクを管理アプリ
  • ColorNote…付箋アプリ。ホーム画面上にメモを配置できる
  • タスクペディア…頭の中のごちゃごちゃを外に出し、見える化してスッキリさせるタスク管理支援ツール

ADHDのある人はスケジュール・タスク管理が苦手な傾向が強いです。ツールをうまく使うことで仕事を見える化し、効率化できるようにしましょう。

異動願いを提出する

今の業務内容が合っていないのであれば、異動願いを提出してみましょう。他部署にいけば自分の興味のある業務をすることができ、周囲からの評価が上がる可能性もあります。

ただし異動願いは大きな会社ほど簡単には通りません。また自分に合った業務に就けるとも限らないので注意しましょう。

休職してみる

思い切って休職し、気持ちをリセットしてみるのもいいでしょう。休職すれば「仕事が辛い」という気持ちから解放されるので、「なぜ仕事が辛いのか」「これからどうすべきか」など客観的に見つめなおすことができます。

また二次障害の症状が出ている人はゆっくりと療養期間に充てることもできます。

ただし休職制度は会社によって適用期間や条件が異なります。利用する前に会社の社内規定を確認するようにしましょう。

貯蓄など現在の経済面を確認しておく

ADHDのある人に限ったことではありませんが、退職を検討するならば現在の経済面を確認しておきましょう。退職して転職先が決まってないと、定期的に給料は入ってきません。しかし生活費や税金、医療費、転職活動費などで、どうしてもお金は出ていきます。

現在の貯蓄や退職金などと今後の支出予定とのバランスをよく考えておきましょう。経済的に無謀な退職はおすすめできません。

対処してもツラいなら潔く退職しましょう

様々な対処をした結果、やはり辛いのであれば退職してしまいましょう。退職は辛い職場とさっぱりと縁を切ることができるので一番の対処法といえます。

次の転職先が不安になるかもしれませんが、各支援機関に相談すればあなたの希望や特性に合わせた就職先を紹介してくれたり必要なスキルを身につけるための訓練を受けられたりできるので安心してください。

また仕事は会社に属することばかりではありません。フリーランスや個人事業など自分の生活や得意分野に合わせた働き方も可能です。

ADHDで退職する方法|退職理由・タイミング・伝え方

ADHDで退職する方法|退職理由・タイミング・伝え方

退職希望のA・KさんA・Kさん

仕事を続けるのが難しい

退職希望のY・TさんY・Tさん

職場にいるのが苦痛

ADHDのある人が仕事の継続が苦しくなったら、退職することも一つの選択肢です。ADHDのある人が退職する際は、退職を申し出る前に心療内科を受診して「診断書」をもらっておきましょう。

診断書はあなたの症状などを証明してくれる大切な書類です。ADHDを理由に退職するとき、多くの場合は会社から診断書の提出を求められます。またADHDを証明する診断書があれば退職しやすくなるので、「辞められなかったらどうしよう」という精神的負担を軽減することができます。

さらにADHDのある人に限らず、退職を申し出るタイミングや伝え方は非常に大切です。タイミングと伝え方をしっかり理解して、円満退職を目指しましょう。

ADHDで退職する際に最適な退職理由

ADHDのある人が退職する場合、2通りの退職理由が考えられます。

ADHDのある人の退職理由
  • ADHDがあることを正直に伝える
  • ADHDのあることを内緒にする

ADHDがあることを伝える場合は心療内科から診断書をもらって自分がADHDであることや、辛くて業務を続けることができないことを正直に伝えましょう。自分が今まで隠していたことを告白することで、心がスッキリするはずです。またADHDがあることで退職する場合、会社都合退職にできるというメリットもあります。

「今まで嘘をついていたと嫌われるのが怖い」という人は、ADHDであることをわざわざ伝える必要はありません。他の理由を伝えて退職するのもアリです。ただし診断書を提出することはできないので、ご注意ください。

ADHDがあること以外の退職理由を伝えるときは、以下のようなポジティブな内容を伝えましょう。

退職理由の例
  • キャリアアップのための転職
  • 資格を取るために学校に通う
  • 起業の準備をする
  • 大学に入り直す

退職を伝えるタイミング:希望日の1か月前に上司に伝える

退職を伝えるタイミングについて法律では以下のように定められています。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。(民法第627条抜粋)

しかし会社には就業規則があるはずです。退職のルールはそれぞれ決まっており、退職のタイミングは、たいていの会社が1~2ヶ月で定めています。就業規則と法律では法律のほうが優先されますが、円満退職を目指すなら就業規則の退職のタイミングに従いましょう。

退職を伝えてすぐに会社を去るのではなく、引き継ぎをしっかりやり終えてから退職するのが円満退職のコツです。

退職の伝え方:出来るだけ直接伝えると円満退社しやすい

退職は直接の上司に対面で伝えるのが、社会人のマナーです。またいきなり「辞めます」と伝えるのではなく、事前に上司にアポを取るようにしましょう。

退職希望のB・IさんB・Iさん

○○課長、お忙しいところ、申し訳ございません。少しお話したいことがあるのですが、直近で10分ほどお時間いただけませんでしょうか?

上司が忙しくてなかなか話をする機会がないときは、メールでアポを取っても構いません。

また上司に退職を伝えるときは、必ず退職の決意を伝えるようにしましょう。「退職のご相談が…」のように相談の形で切り出すと、上司は「まだ辞める決意が固まっていない」と思い引き止めてくる可能性が高いです。

退職を伝えるときは、直接対面で「辞めます」とはっきり伝えるようにしましょう。

法律上は電話やメール、LINEで退職を伝えても問題はない

法律では「退職を伝えるのは2週間前」と、退職のタイミングについての定めがあります。しかし実は「退職は直接の上司に対面で直接伝えなくてはいけない」とは決められていません。

「上司に対面で直接」はあくまで社会人としてのマナーです。法律上は電話やメール、LINEで退職を伝えてもなんら問題ありません。

退職希望のU・AさんU・Aさん

ミスが怖くて会社に行けない

退職希望のA・KさんA・Kさん

二次障害のうつ病がツライ

このように会社に行くのが困難なときは、自分にできる方法で退職を伝えるようにしましょう。メールで伝えるときの一例をご紹介します。

メールで伝える例

〇〇課長(上司の名前)

お疲れ様です。△△(あなたの名前)です。

突然ご連絡しまして申し訳ありません。一身上の都合により◯月末を持ちまして退職させていただきたく存じます。本来ならば直接お話しすべき内容なのですが、体調不良により出社することが困難な状況のため、メールでご連絡させていただきました。
〇〇課長には今までお世話になりました。本当にありがとうございました。

自分で退職できないときは退職代行の利用を検討しよう

自分で退職できないときは退職代行の利用を検討しよう

退職希望のY・TさんY・Tさん

自分で退職を言い出しにくい

退職希望のU・AさんU・Aさん

退職理由をうまく言えるか心配

自分で退職できないときは退職代行の利用を検討しましょう。

退職代行のメリット

  • 会社に行かずに退職できる
  • 上司に会わずに退職できる
  • 即日退職可能
  • 有給や未払残業代の交渉をしてくれる
  • 離職票の依頼をしてくれる

退職代行に依頼すれば「退職を言わなくてはいけない」という精神的ストレスが軽減され、スピーディーに退職することができます。依頼前の相談料は無料の業者がほとんどなので、まずは相談してみてください。

 

退職代行で会社を辞めるメリット

退職代行のメリットをもう少し具体的にご説明していきます。

退職代行のメリット
  • 退職を切り出す心理的負担がなくなる
  • どんな理由でも退職できる
  • 退職後にトラブルにならない

退職代行に依頼すれば、退職代行が退職の意志や退職の希望などを依頼人に代わって伝えてくれます。そのため「辞められないかもしれない」「うまく伝えられないかもしれない」といった心理的な負担を感じなくて済むはずです。

また退職代行は依頼人が退職できるように、理由をうまく伝えてくれます。例えば「理由はないけどなんとなく辞めたい」といったときでも、引き止められることなくスムーズに退職可能です。

さらに退職代行を利用すれば、退職後のトラブルを防ぐことができます。というのも退職代行が会社としっかり話し合いをし、安全に退職できるようにしてくれるからです。

退職代行で会社を辞めるデメリット

退職代行にも、いくつかデメリットがあります。

退職代行で会社を辞めるデメリット
  • 退職するのに費用がかかる
  • 職場の人との関係性が悪くなる

通常退職をするのにお金を払う必要がありませんが、退職代行を利用すると数万円の費用がかかります。「退職するのに料金がかかるなんてもったいない」と、考える人も多いでしょう。

しかし退職代行を利用する人は、会社を辞めたくても辞められなくて悩んでいる人達です。数万円払うことで辛い状況から解放されると思えば、退職代行の費用はけっして無駄なお金ではないといえます。

また退職代行を利用すると、ある日突然会社からいなくなることになります。そのため職場の人からは、「裏切り者」「逃げた」と思われてしまうかもしれません。

しかし職場の人は辞めてしまえばそうそう会わないので、関係性が悪くなっても気にすることはないでしょう。

退職代行の料金相場

退職代行業者は今では100社以上あり、業者によってかかる費用は様々です。10万円といった高額な業者もあれば、たった1万円で依頼できる業者もあります。

退職代行は運営元によって「弁護士」「労働組合」「民間企業」の3つに分類され、それぞれの料金相場を以下のようになります。

運営元 料金 退職の交渉 訴訟対応
弁護士 50,000100,000
労働組合 25,00030,000 ×
民間企業 10,00050,000 × ×

弁護士の退職代行は費用が高額な傾向があります。しかし弁護士は会社とのトラブルを抱えている人にとって、大変強い味方です。例えばパワハラなどで精神的な苦痛を受けて退職した場合、慰謝料請求の手続きを相談することができます。

労働組合は「退職の交渉」ができ、料金もリーズナブルです。「有給を全部消化したい」「未払残業代を払ってほしい」など、退職に関する要望を会社と粘り強く交渉して叶えてくれます。

民間企業は3つの運営元の中で一番料金が安いです。その代わり交渉や訴訟対応ができないので、会社とのトラブルや退職の要望がないときに利用することをおすすめします。

会社を退職するまでの一般的な流れ

会社を退職するまでの一般的な流れ
ここからは会社を退職するまでの一般的な流れをご紹介していきます。スムーズに退職するための参考にしてください。

STEP①上司に退職を申し出る

退職をすると決めたら、できるだけ早く上司に申し出るようにしましょう。法律上では「退職を申し出た2週間後に退職してもいい」ことになっていますが、基本的には会社の社内規定に載っている退職のタイミングに従うようにしましょう。

休職中の場合はメールや電話で伝えても構いませんが、直接対面で伝えることがベストです。

STEP②有給休暇を消化する

もし有給休暇が残っているなら、有給休暇を消化するようにしましょう。

退職希望のA・KさんA・Kさん

辞めるのに休みまで取るなんて申し訳ない

有給休暇の取得は「労働者の権利」なので、後ろめたく感じる必要はありません。上司と相談しながら有給を使い、無理のない範囲で最後の日まで業務に努めるようにしてください。

STEP③離職票希望を伝えておく

転職先の決まっていない人は「離職票の発行」をお願いしておきましょう。上司に伝えてもいいですが、人事部など労務を扱っている部署に直接お願いしておくと確実です。

離職票は失業手当の申請をする際に必要になります。退職した後からでも発行してもらうことは可能ですが、離職票が手元に来るタイミングが遅くなる分失業手当の受給手続きも遅くなってしまいます。

STEP④社会保険の切替を行う

転職先が決まっていない場合、退職したら一番に社会保険の切替を行わなければなりません。

健康保険は以下のいずれかに加入します。

保険の種類 手続きの期限
国民健康保険 退職日から14日以内
社会保険の任意継続 退職日から20日以内
身内の扶養に入る 退職日から30日以内

また厚生年金は国民年金に切り替える必要があります。退職してから慌てないようにどの保険に切り替えるかあらかじめ考えておき、手続きの準備をしておきましょう。

 

ADHDの人が退職後にやるべきこと3選

仕事をしているときはなかなか自分の時間をとることができませんが、退職後は十分な時間を作れるはずです。しっかりと自分のために時間を使い、じっくりとADHDと向き合い、今後について考える機会にしましょう。

まずは身体を第一に考え治療を進める

ADHDは、完治させる方法は見つかっていませんが、適切な治療を行うことで症状を和らげたり、日常生活に支障が起きないようにできます。まずは、しっかりと時間をかけて治療することに専念しましょう。

ADHDの治療は、心療内科や神経科などで受け付けており、投薬で治療することが可能です。また、投薬以外にも心理療法でアプローチする方法もあります。まずは、ADHDを治療するために通いやすい、かかりつけ医を見つけましょう。

自分の長所や得意なことを分析する

ADHDにはさまざまな特性があります。どのような特性を持つかは人それぞれで、同じADHDを持つ人でも、まったく別の症状が現れることがあります。そのため、自分のADHDの特徴をしっかりと見極める必要があります。ADHDの特性はデメリットばかりではありません。

例えば、ひとつのことに集中してしまうことは、考え方によっては素晴らしい武器にもなり得ます。自分の長所や得意なことを整理しておくことは、次の仕事を探すときや面接に役立つため、ADHDの治療と平行して行うと良いでしょう。

就労移行支援事業所などを利用して転職先を探す

ADHDの治療や、自分の長所などの整理ができたら、就労移行支援事業所などを利用して転職先を探してみましょう。就労移行支援事業所とは、ADHDなどの障害を持っている人へ、職場の紹介や職場定着のサポートを行ってくれる場所のことです。

体調面を考慮したサポートや、安心して働くためのサポートを受けながら転職活動ができ、働く意欲のある人を積極的にサポートしています。転職サイトを利用した職探しに不安がある場合は、就労移行支援事業所を利用してみると良いでしょう。

退職後の参考に。ADHDに向いている仕事を紹介

世の中にはADHDを持っている人でも活躍できる仕事がたくさんあります。自分が持っている長所を最大限に活かせる仕事を選べれば、今までとは違った働き方ができるでしょう。転職を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

デザイナーやクリエイターなどのクリエイティブ職

デザイナーやクリエイターなどのクリエイティブ職では、ADHDの人が持つ自由な発想や、独創的なアイデアを活かせる機会が多いことが特徴です。ほかの人では思いつかないようなデザインや、人々の目を引く独創的なデザインを作成するには、人にはない感受性などが必要です。

また、さまざまなことに好奇心を向けられる特性は、ひとつの考え方に縛られずに自由な発想を導き出すことにも役立つでしょう。また、最近はWEBを中心にさまざまなクリエイティブ職が募集されているため、間口が広いこともメリットです。

プログラマーやエンジニアなどの技術職

プログラマーやエンジニアは、ひとつのことに集中して取り組む必要があるため、持ち前の集中力を活かすことができます。プログラミングは、決して画面に文字を打ち込むだけの単純作業ではありません。

プログラミング言語を理解し、エンジニアとしてのスキルを磨くことで、システムが正常に稼働するように制御することができます。プログラマーやエンジニアは、ADHDの特性であるひとつのことに集中する力が大きな武器となります。

作家や俳優、ネイリストなどアーティスト系の職種

クリエイティブ職と同じく、独創的な発想や枠にはまらないアイデアは、作家や俳優、ネイリストといったアーティスト職にも向いています。じつは、テレビで活躍している芸能人やアーティスト、さらにはオリンピックに出場しているスポーツ選手の中にはADHDを持っている人もいます。

彼らが活躍できているのも、じつはADHDの特性を長所として利用しているからかもしれません。職業として目指すには難易度が高いかもしれませんが、選択肢を広げる意味でも覚えておきましょう。

研究者や自動車整備士など好きなことを追求できる仕事

研究者や自動車整備士などは、自分の好きなことをとことん追求できる仕事です。とくに研究者は、自分が興味を持ったことを研究することが仕事なので、誰にも気兼ねなく研究に没頭することができます。

ただし、場合によっては大学での講義や、研究結果を発表する機会があるかもしれません。人前に出ることが苦手という方は、少し困ることがあるかもしれませんが、自分の好きなことを広める機会として挑戦してみるのも良いでしょう。

ADHDで退職したくなる悩み事は?グレーゾーンの特徴もまとめて解説 まとめ

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ADHDのある人は退職したくなる悩みを多く抱えています。本人が悪意をもって起こしているミスや失敗ではないので余計に辛く感じるはずです。

周囲に相談したり補助ツールを活用したりして今の仕事を続けていく努力も大切ですが、どうしても辛いときは無理せず退職を検討しましょう。

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